CASHMERE FABRIC
フリンジショールジレ
Jan 26th, 2022

CASHMERE FABRIC フリンジショールジレ

今回はロゥタスならではの「逸品」のご紹介です。

2022年の来シーズンから、ほんの僅かですが微調整を入れるために今季モデルで生産が一旦終了となるため秋冬物の中で最も人気がある100%ピュアカシミヤの【フリンジショールジレ】がOUTLETに登場します。

■Cashmere Fabric / Fringed Shawl Gilet
カシミヤファブリック / フリンジショールジレ
R13-ZZ0002

このショールジレは「着る」事が出来る優れたデザインで、しかも100%カシミヤ製となるとRawtus以外ではおそらくどこもやっていないオリジナル商品じゃないかと思います。

そしてその開発にはストーリーがあるという事で今回はデザインチームにインタヴューして記事にしましたのでご覧ください。


“着るショール”の誕生秘話!

2013年物の秋冬シーズンコレクションで初めて披露されたカシミヤショールジレは超ロングセラーの銘品として世界中のお客様に届けられた商品です。

ショールは通常は肩にかけたり首に巻き付けたりするものですが、「ロゥタス」のカシミヤショールは、“着る”ことができます。
発売当初はショールとしてよりジレの機能を優先したのでポケットが付いていたり衿にラクーンファーが取り付けられていたりと、よりアウターとして存在感があるものでした。

ではなぜ、このスタイルが生まれたのでしょう?
実はこのショールジレ、もともと「ロゥタス」のレザーウエアの中に着る「防寒ライナー」がきっかけなのです。

2010年にRawtusがパリでブランドをスタートした時のコレクションが2011年春夏物。
当然、次のシーズンは秋冬物となるわけで、実は私たちも商品の構成も軽いレザーばかりでは気候が極寒の欧州では全然着てもらえないかも、と思っていました。

というのもファーストシーズンのオーダーをもらったショップの中に「ノルウェー」と「ベルギー」のお客さんがいて、「秋冬シーズンはどうなるの? 楽しみにしているわ」というコメントももらっていて、しかも「ノルウェー」と「ベルギー」の冬シーズンは当然日本より厳しい気候。。。。
裏地も無く、薄く軽いレザーウェアだと、まず絶対にバイイングしてもらえないかも、、、
せっかく春夏物でオーダーが付いたのだから秋冬シーズンも取引につなげたい! と思い、日本に帰国してからすぐに秋冬物の対策を色々と考えることになりました。

まずは冷静に自己ブランドの分析から行う事に。
Rawtusのレザーウエアの一番の優位性というか、最大の特徴、セールスポイントは何か? と問われたときに私たちが話すことは決まっていて

「薄くて、軽くて、なめらかで、柔らかくて裏地が無くて一枚で着れるレザーウエアです」

ということは、その優位性ばかりに気を取られてしまって「シーズン性」や「防寒性」ということは全く頭の中にありませんでした。

実は「皮革」というのは、それ自体が発熱したり保温したりという機能は全くありません。
唯一、風を通さない「防風」という性能があるだけで、気温が低いときには皮革自体も冷やされてキンキンに冷たくなってしまうのです。

一般的に流通している他のレザーウェアも秋冬物は裏地と皮革の間に中綿を入れたり、綿をキルティングした裏地が付いていたりと「保温性」の機能を追加しているので裏が付かないRawtusのレザーウエアは全く新しい方法とアイディアで「保温性」の加えなければなりませんでした。

そして考え出したのが「ロゥタス」 のレザーは1枚仕立てという、他にはないオリジナリティーがあるので、そこは崩したくないというデザイナーの思いがあったので、メンズのコートのように取り外し出来るライナーを取り付けたらどうだろうか? というアイディアが浮かびました。

しかし、ライナーはそれ単体では着れずに表とセットしてで完結するもの。
しかも着脱の為のファスナーとかボタンなど取り付けるための付属品が多く付けなければならないという制約もありました。
それにライナーの暖かさをキープしようとすると綿の分量が増えて、シルエットもパンパンに膨れ上がってしまうのも問題となりました。

さて、、、、本当にどうしようか、、、と考えていた時、スタッフがたまたま私物で着ていたウールのカーディガン見てパッと閃きが浮かんだのです。

「レザーウエアの下にものすごく暖かいニット製のカーディガンを着たらどうだろう?」

というアイディアが出て、早速ウールカーディガンの上からレザージャケットを着てみると、、、
ウールの保温性もレザーの防風性も両方の良い点がプラスされて暖かさという点は何とかなりそうかも、、、、と気づいたのです。

ただ、セーターが分厚ければそれだけレザーの分量も大きくしなければならないし、ウール自体、繊維が重いのでセーターの重量分、重く感じてしまいます。
そこで私たちが求めたのは「薄くて、暖かくて、肌触りが良くて、軽い素材で作るセーター」でした。

糸の性能で考えれば「アクリル」「ナイロン」などの化学繊維は機能性は十分ですが、それ単体で編むと様々な欠点もある(毛玉や耐久性)ので、通常はは混紡と言ってウール70%、アクリル25%、ナイロン5%くらいの割合で糸が作られるのです。

また、意匠糸と言って糸自体をねじったり表面をひっかいて起毛させたりと糸自体に工夫を凝らして保温性を加える方法もありますが、それも糸からの開発には時間もお金も多くかかってしまいます。

という調査を色々な方面にしていると、やがて東北の岩手県にたった1社だけ、カシミヤの糸を使って「ファー加工」という毛皮のように毛並みを出す加工技法を行う工場がある!
という事が分かり、実際にデザインチームがその工場に伺って実際にどんなものか見に行かせてもらう事になったのです。

工場では、まずRawtusのレザーを見せながらコンセプトや問題点を色々と説明し、パリの展示会から世界に販売していきたい!という私たちのビジョンを話すと、工場の社長さんがとてもRawtusのレザーを気に入ってくれて、うちのカシミヤのファー加工のセーターとコンビにして是非世界で売ってほしい! という事になり、全面協力して頂けることになったのです。

早速その加工現場を見せてもらうと、※ファー加工の製法が物凄く難しくて、実はどこでも簡単に出来るという物では無かったのです。

※ファー加工とは
獣毛がもともと持っている毛の表面にあるスケール(鱗片)が、水分や物理的作用の影響を受けて繊維同士が絡みあう現象が発生します。
その現象で起こる「収縮」や「毛羽立ち」をコントロールすることでカシミヤならではの繊維の長さとボリューム感を最大限に引き出す技術で工場の職人さんの技術が大きくモノを言うテクニックだったのです。

暑い蒸気がこもる加工部屋の中にカシミヤのセーターを置いておくことで獣毛独特の毛細現象を最大限に進化させた工法で作られるという事で、ただでさえ高価なカシミヤ素材を使うという贅沢さ、そしてメイドインジャパン。。。

こんな素晴らしい素材、技法は他にはない! 絶対いける!
もう、これしかない。という想いで私たちはこの技法にかける事にしました。

そこから試作が始まり、セーターを編むゲージを極力薄く、軽くしつつ、抜群の保温性を求める。という真逆の特性を持つリクエストをお願いして何度も試作品を作ってもらいました。

そして出来上がったのは何と12ゲージという薄さのハイゲージで編み立てた後に ※ファー加工を施すと、毛がふわっと毛並み立って、まるで本物のファーを着ているような見た目なのに重さは見た目とは裏腹に物凄く軽い! しかも肌触りも最高にイイ!
さらに毛羽立ったことで保温性能が向上し、レザーの下に着るとまるでダウンを着ているかのような軽さと暖かさを得ることが出来たのです!!!

それで仕立てたカシミヤカーディガンはそれだけでも羽織れて、レザーを着ても袖や身頃がパンパンに膨らむことも無く、見た目の影響が全く言っていいほど無い画期的なニットライナーが完成したのです。

そして次のシーズン、2011-12秋冬シーズンのパリ展示会でカシミヤのファー加工のカーディガンセーターをライナーにした商品を発表すると レザーだけでも、カシミヤカーディガンだけでも両方単体として使える!
凄いアイディア!
という事で、多くの国のバイヤーから評価を得て秋冬でも使えるレザーとして大ヒット!したのです。

このアイディアはまさにブランド名のRawtusのまま、 コンセプト通りレザーにカシミヤが足されて秋冬物でも使える画期的なオリジナルデザイン。
そしてこのアイディアが生み出されたことでロシアやカナダ、スイスなど気温が寒い国からもオーダーが入るようになりグローバル化がどんどん加速していくこととなりました。


やがて、徐々にお客さまから防寒ライナーだけでも欲しいという声が多くなってきたので、ライナーだけでもきちんと服として成り立つようなアイテムを制作することになったのです。
そして最初にファー加工を作ってもらっていた東北の工場が突如廃業となり、その技術はそのまま今度は山梨にあるニット工場に伝わることとなり、しばらくは継続して発注していたのですが
技術的に山梨の工場でもこのファー加工を維持できなくなったという事で別の方法を考えなくてはならなくなりました。

しかもブランドのコンセプトにもある「何かにプラス」して新しいアイテムを生み出すということは崩さずに。

このファー加工が出来なくなったことで、ダウンを使って、という選択もあったかもしれません。
しかし、ダウンは体温によって膨張が激しく、レザーの下に着ているとパンパンに膨らんでしまう欠点があったのでダウンはまず使えないと。

ある時、デザイナーが偶然にもカシミヤのショールを羽織ったままレザーカーディガンを着た時、ピンと来たのです。

そこでカシミヤショールという“巻く”だけの単純なアイテムから、それを“着る”という発想が生まれました。

そして着るためには袖を通すアームホールが必要で、ホールの位置や長さを決める時も、どんな体形でもストレスなく着られるようにするために、 スタッフがみんなで協力して微妙なジャストな位置を検証しました。私も強い思い入れがありますね。

そして“着るショール”は素材にもこだわりを持ちました。

山梨でもカシミヤのファー加工ニットは出来なくなりはしましたが、原材料のカシミヤ糸は日本の最高峰の技術で紡績された東洋紡糸工業の協力もありカシミヤ糸の供給は可能でした。
そこで次はニットではなく、最初からショール織物作るとなると、その技術に最も長けていた産地としてピックアップしたのが尾州、尾張一宮でした。
そこの職人さんの手で今度はセーターではなくショール生地として繊細でしなやかな100%ピュアなカシミヤ生地を織ってもらう事になったのです。

しかもなんと140cm巾という通常のストール織物の倍の幅をリクエストしました。
140cm巾のストール生地、しかもカシミヤとなると日本ではRawtusだけの完全オリジナル別注品です。
中国製だとそれらしいものはありますが、世界で販売するには、そこは日本の技術を信頼したかったのが一番。

そして完成したカシミヤのショールの端の毛を一本づつ抜き取ってフリンジ装飾を加え、生地の両面にも微起毛加工して縮絨加工を経て、ショールでありながらまるで服のような存在感と暖かさを兼ね備えたショールが完成したのです。

そして最後の仕上げとして袖を通す部分にレザーパーツを取り付けます。

このレザーパーツは東京の下町の工場で薄く加工されて楕円形に型抜きされたものを北陸の縫製工場で丁寧に付けられます。
なので100%メイドインジャパンで完結できています。

この着れるカシミヤショールはレザーカーディガンのライナーとしてはもちろん、逆にレザーカーディガンの上からも重ねることもでき、 なおかつ本来のストールとして首周りに巻き付けるのもOKです。
上下を逆さまにすることで着丈を変えることも可能、という優れたデザインです。

いろいろとコーディネートができるのがとても便利! との声が多く、いまでは秋冬には欠かせない万能アイテムとしてラインアップされるようになりました。

今シーズンも秋の立ち上がりから、全国的に人気のアイテムです。
秋冬の定番として、みなさまのクローゼットにぜひこの“着るショール”をプラスしてみてはいかがでしょうか。

このショール、生産条件が年々難しくなり、コロナ禍で職人さんが減ったりして中々原料確保も難しいので、この入手できるタイミングで是非1着はお持ちになっていただけたらと思っています。